オペラには多額の費用が掛かると前回申し上げました。天井無しと申し上げても過言ではございません。
それを限られた予算の中で上演するとなりますとどこかを制約して予算を削らなくてはなりません。
合唱団をアマチュアの方を公募して編成するのもその一環と言えるでしょう。
何よりもお金がかかるのはオーケストラです。
こればかりは素人には不可能です。アマチュアのオーケストラを使う方法もありますがどうしても限界がありプロとの差はいくら稽古を積もうと埋まるものではありません。
プロの方達でオーケストラを編成すると規模にもよりますが300万円から500万円は覚悟しなければなりません。プロのオーケストラの場合はオケの稽古が2回。オケと歌の合わせ、ゲネプロで本番となります。
これはアマチュアのオーケストラにはまず不可能でしょう。
折衷案でコンマスと各パートの要所にプロを配してアマチュアを使うというケースもよくありますが精度は落ちます。
制作の立場ではここまでお金をかけられないといたしますとオケはピアノやエレクトーン、ピアノと弦楽四重奏とフルートなどの重要な管楽器で代用という発想になります。
次はバレエです。バレエはグランドオペラであれば不可欠なのですがプロ団体の公演でもカットされるケースが多いようです。
バレエ団を雇うということになりますとプロであればオケの予算くらいは覚悟しなくてはなりません。どうしてもバレエを入れなくてはならない場合はバレエ教室の生徒たちを使うケースが多いようです。
裏に目を転じますとまず衣裳です。
予算を押さえたい場合は衣裳を各自持ち寄りという方法をとる場合があります。
ソリストたちには制作側が揃えて合唱は各自衣裳を持ち寄るケースが多いようです。
これですと予算は助かり演出上設定が近代であればそれらしく見えるものもございますが演出意図の統一感はございません。
ヘアメイクもキャストだけメイク係がやり合唱団は自分でやる団体が多いです。
ただ舞台は小さい役のキャストや合唱団の衣裳やメイクを豪華にしたほうが舞台は映えます。
照明、舞台監督はプロを雇うことになります。
他には演出家がいなくて指揮者や出演している歌手が演出をやるケースがあります。
演出家だけでなく指揮者なしというお粗末な団体もあります。
出演歌手達にチケットノルマを課す方法もあります。
これは例えばギャラが5万円で5千円のチケットノルマ20枚といたしますと10万円のノルマということになります。
20枚売り切ればよいのですが売れ残りは自己負担となります。
つまり10枚しか売れなければプラスマイナス0となります。
これは歌手達にはかなりの負担でこれが理由で断る方もいらっしゃいます。
制作側としてはこれで思うようにキャスティングが出来ないデメリットがあります。
ざっとこんなところでしょうか。
オペラを上演するのは大変なことなのです。
どの団体も苦労しています。ただ質を維持するためにはどうしても外してはいけないものがあります。
何故このようなことを長々と述べたかと申しますと関わる団体を選択する場合に基準を設けるべきだと思うからです。
どうしてもこの歌手、この指揮者の下でやってみたいと考えている場合は別ですがそうでないのならできるだけ体制や体裁が整っている団体を選びましょう。
作曲家はオーケストラの音を思い描き自分の曲が完全な状態で舞台で上演されることを想像して曲を書いたはずです。
完全とはいかないものの可能な限りそれに近い状態を再現できる団体を選ぶべきです。
チェックポイントを挙げてみます。
演出家、指揮者が揃っているところ
よく指揮と演出、歌手と演出が同一人物という団体があります。
意欲は買いますがこれですと舞台を俯瞰する演出家の視点は失われます。
指揮者は舞台を眺められる位置には居りますが音楽を作りまとめることが仕事ですから意外と舞台を観ることが出来ません。また歌手は自分が歌い演じることに集中しておりますので他の歌手たちの動きは見えません。
実際に舞台に立つのですから舞台全体を観ることが不可能なことは自明のことでしょう。
要するにこれらのケースは演出家不在に等しいのです。
これは避けるべきです。
オーケストラであること
オーケストラをピアノやエレクトーンで代用することは否定しませんがこれはオペラの試演に過ぎません。できるだけ完全に近いオーケストラで上演する団体を選ぶべきです。
迫力が違います。オーケストラと歌の合わせの稽古が本番前にありますが初めての方は震えるような感動を覚えることでしょう。
衣裳にこだわるところ
専門の衣裳さんがいて合唱団の方達にもちゃんとした衣裳を用意する団体は間違いなくいい団体です。
衣裳は軽い役や合唱にいい衣装を着せるというのが舞台を豪華にする鉄則です。
演出、オーケストラ、衣裳の3つが簡単なチェックポイントです。
せっかく貴重な時間とお金を使うのですから慎重に団体は選ぶべきでしょう。
その6に続く
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