コラム

3人のダーメ

モーツァルトの魔笛に出てくる3人のダーメ(女官)のお話です。
オペラの冒頭タミーノを襲った大蛇を退治する勇ましい女戦士であります。彼女たちは夜の女王に仕える女官でもあります。

ワクワクする魔笛の始まり、気絶しているタミーノに近寄り鞘当てを演じる際のダーメの三重唱はモーツァルトが書いたオペラの音楽の中でも1,2を争ういい音楽だと私は思います。

従いましてここは間違いなくこのオペラの掴みの部分です。
ここが締まりませんと他の場面でどのキャラクターが健闘いたしましてもその上演自体にあまりいい印象を持たれないでしょう。
それほど重要なのです。2月の手前共オペラバフの魔笛でもこの場面は稽古でかなり多くの時間を割くことになるでしょう。

この役をおやりになった歌手の方はご存じでしょうが結構芝居が大変なのです。
タミーノを取り合う鞘当て、タミーノ、パパゲーノにそれぞれ笛、ジングシュピールを渡すタイミングなど、思うにシカネーダー一座の歌手たちは優秀だったのでしょう。

歌は徹底してアンサンブルです。しっかりアンサンブルができる歌手でないと務まりません。音楽はモーツァルトですからアンサンブルが決まれば舞台効果は絶大であります。

嘆かわしいことに魔笛のダーメは単独のアリアもなくその他大勢みたいな印象があるのかあまり重要視されない方がたまにいらっしゃいますがこれは大きな誤りです。
アリアがないことで軽視するのは認識不足です。要するにどのようなオペラでも重要でない役などないのです。

魔笛は名作ですから古今の著名な指揮者の名盤が数多くございます。
ダーメの配役は実力派の歌手を起用しています。

ちょっとデーターを拾ってみますとショルテイの旧盤のダーメⅡはミントン、ベームのドイツグラモフォン盤のダーメⅠはヒルブレヒト、Ⅲはヴァ―ウナー、サヴァリッシュ盤のダーメⅢはファスベンダー、古いところでは1941年のザルツブルクライブではダーメⅠがコネツニ、Ⅲがニコライディという具合で錚々たる名歌手たちが名前を連ねています。

指揮者は魔笛におけるダーメの重要性をよく認識しています。
ダーメを持ち役とした歌手の中で私は古い人ですがジークリンデ ヴァーグナーの名がすぐ思い浮かびます。
ダーメのⅢ、コントラルトの歌手でした。
ドイツ系のオペラのバイプレイヤーとしてご記憶の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。何よりも名前がオペラ好きなら一発で覚えますね。

バイロイトの一族に居てもおかしくない名前です。ただ血縁関係はないようですから親御さんがワグネリアンだったのでしょう。
フルトヴェングラーに1951年のザルツブルクで起用されて彼女のキャリアがはじまりました。
ジークリンデ ヴァーグナーのダーメはフルトヴェングラーのザルツブルクライブ、ベームのドイツグラモフォン盤、そしてヨッフムが振ったベルリンドイツオペラ来日公演の日生劇場ライブなどで聴くことができます。
1921年 リンツに生まれ、2003年 ベルリンで亡くなりました。お墓はベルリンにあるようです。

さてあなたがこれからオペラ歌手を目指す方であれば悪いことは言いません。
魔笛のダーメをマスターすべきです。多分オファーは来るのではないでしょうか。

オペラバフの魔笛のダーメはいかがなりますか?
どうぞ皆様の目、耳でお確かめいただきたくお願いします。
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