童子と書くとかなりご年配の方は中村錦之介の笛吹童子を思い出すのではないでしょうか。
オペラファンであれば既にお分かりでしょうが三人のクナーベは魔笛に登場する狂言回しのキャラクターです。
童子ですから少年です。
外国のオペラ劇場では少年合唱団員の少年たちを起用します。
ウィーンでは言わずと知れたウィーン少年合唱団、バイエルンであればテルツ少年合唱団、フランクフルトではレーゲンスブルクの大聖堂聖歌隊、ドレスデンなら聖十字架少年合唱団などそれぞれ近隣の名門少年合唱団の少年たちが起用されます。
またこれが例外なく途轍もなく上手いんですね。
音程、リズム、芝居など完璧にこなします。英才教育の賜物でしょう。
某日、ウィーンで魔笛を見ましたがこの日の公演はオケのノリが悪くまるで消化試合のようなかったるい演奏でした。しかしウィーン少年合唱団の三人の童子が歌いだした瞬間オケのアンサンブルが締まりだしたのを憶えています。しかも彼らは猿之助のように宙吊りでした。
これはすごいことです。
さて日本で魔笛を上演する場合、このクナーベに少年たちを起用するのは残念ながらかなり困難なことです。
まず教会の聖歌隊の伝統のないわが国ではしっかり歌える少年を探すのはかなり難しいことです。それと中学生以下の子供を夜遅くまで使うことを法律が禁じています。
探すのが難しくて時間の制約等がありますと制作側としましてはクナーベ役にちょっと小柄な女声歌手を起用するのはやむを得ないことです。
それに若い女声歌手は出番を待っている人が大勢居ます。これでは新国でも二期会でも少年を使えない訳であります。
2023年の2月のオペラバフ主催の魔笛でもこのようなわけで女声歌手の皆さんにクナーベをお願いしました。
(2月10日、23日 光が丘IMAホール チケット好評発売中)
公演チケットのお申込みはこちら(お申込フォームへ移動します)
彼女たちの歌が拙いというわけではけしてないのですがモーツァルトがイメージしたのは紛れもなく少年の声でした。女声と少年の声は違います。この事実はどうしようもないことです。
演出家によってはクナーベ役の成人女声歌手達に少年の演技を要求する方もいらっしゃいます。
でもこれはおかしいことになります。
いくら真似てもそれは大人の女であり少年にはなりません。
よくやっていると思わせてもちょっと痛々しい異様な結果に終わるでしょう。
今回の我々オペラバフの魔笛ではあえて少年といたしません。
体形はそのまま女性ですから古代ギリシャ風の衣裳で女性として出します。
クナーベの進化形とでも申しましょうか。
苦肉の策ではありますがどう見ても少年には見えない大人の女性はそのままの姿で使ったほうが自然でよい結果を生むと思いました。
このクナーベの問題は日本独特の問題かもしれませんがこれ一つを取ってもオペラを完全な形で上演するのは難しいことです。
この記事へのコメントはありません。