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「後宮からの誘拐」あらすじ

1. 物語が始まる前に
 このオペラは全てが二項対立の中にある。男と女、キリスト教とイスラム教、支配する者とされる者、その中でコンスタンツェは己の信条を一片足りと曲げない事によって孤独である。セリムは支配する者の頂点にいる者として孤独である。オスミンは宮殿の庭園という何処にも属さない所にいる者として孤独である。又庭園という慮外の地にいることでこの二項対立の中から外れていると自ら思いたい。そこに外から来た者としてのベルモンテが現れることにより、物語は動き始める。後宮はコンスタンツェとセリムの物語であり、オスミンの物語なのだ。そこに典型的な庶民であり、私達の代弁者でもあるブロンデ、ペドリロが加わることにより、一層物語が明確になる。そして物語の目撃者である合唱が加わることにより、ギリシャ古典劇の外枠が決まる。

 時代はレコンキスタの終わりごろ、地中海に面したトルコの荘園の夕方から次の日の夜明けまでの12時間の出来事である。登場人物は地中海航行中に海賊に捕えられ奴隷として売られた、スペインの貴族の娘とその召使、荘園の主であるトルコのパシャ、セリムとその宮殿の人々である。

2. 一幕
 幕が開くと、そこは太守セリムの宮殿の中庭で、上手にハーレムの入口、下手奥に庭師オスミンの部屋、下手前は宮殿の中庭に通じている通路がある。オスミンは自宅の傍らに生えているイチジクの実を採っている。そこに、召使ペドリロからの密かな手紙を受け取って、奴隷として捕らわれている許嫁のコンスタンツェ、ペドリロ、ブロンテを助け出しに来たベルモンテが現れる。何とかして宮殿の中に入れないかと塀の外を探るベルモンテは塀の上から見えるオスミンに声をかけるが、相手にされない。そこにオスミンの手伝いをしているペドリロがやって来てオスミンの事をからかうと、オスミンは「お前なんか、殺されてしまえ」と歌う。一人残ったペドリロを見つけたベルモンテが塀の外から声をかけると、喜んだペドリロは中にベルモンテを引き入れる。コンスタンツェへの愛と不安を歌うベルモンド。そこに舟遊びに出ていた太守セリムの一行が帰って来る。その中にはコンスタンツェの姿も見える。ハーレムの女達と宮殿の衛兵、召使、側近が一行を出迎え、太守セリムを讃えて歌う。それらの人が去った後、一人残ったコンスタンツェにセリムはお前の事を大事に思っている。俺の女になれ、返事は明日までだと告げる。コンスタンツェは私の心は許婚である、ベルモンドの下にあると歌う。コンスタンツェが去って一人思案するセリムの下にペドリロがベルモンドを伴ってやってくる。ベルモンテを宮殿に引き入れる策略で、建築技師としてセリムに雇って下さいとお願いする。うまく雇ってもらえた二人は宮殿の中に入ろうとするが、オスミンが現れて、止めようとしてひと悶着するが、うまくオスミンを出し抜いて入って行くのをオスミンが追いかけて幕となる。

3. 二幕
 幕が開くと、前幕と同じ宮殿の中庭でブロンデとオスミンが何か言い争っている。ブロンデはがみがみいわれるのはもうたくさん、ヨーロッパの女にはもっと、優しく敬意を持って接するべき、と歌う。二人はお互いのすれ違った心を吐露する。最後にはオスミンはブロンデに追い払われてしまう。そこにコンスタンツェが夕暮れの景色を眺めに二階のベランダに現れ、ベルモンテを思い今の苦しい胸の内を歌う。コンスタンツェは中庭にブロンデが居るのに気づき降りていき、ブロンデに慰められる。そこにセリムが現れ、気持ちは決まったかと尋ねる。コンスタンツェは私の気持ちは変わらない、どうかお慈悲と憐れみを下さいと訴え、中庭を去る。そこにコンスタンツェを探してブロンデがやって来て、やはりブロンデを探していたペドリロと遭遇する。ペドリロはベルモンテが遂にやってきたこと、逃れる手段の船を用意していること、睡眠薬入りの酒を飲ましてオスミンを酔いつぶし、その後夜中の12時に迎えに来ると話す。ブロンデはこれで奴隷生活から解放されると、喜びの歌を歌う。ペドリロは怖いが勇気を出して頑張ろうと決心する。そこにオスミンがやって来て、ペドリロに騙されてお酒を飲み、酔って寝てしまう。ペドリロはオスミンの家まで、オスミンを引きずって行く。そしてベルモンテを呼びコンスタンツェと会わせる。コンスタンツェとベルモンテはやっと会えた嬉しさを歌うが、男二人がそれまで胸に納めていた女達が本当に自分達に操を立てていたのかと言う疑念を口に出してしまう。それに憤慨したブロンデはペドリロの頬を叩いてしまう。女達は自分達を信じられない男達を悔しく、悲しいと嘆く。女達の反応にどうしたら良いかかわからない男二人は、膝をついて許しを請う。女二人は疑ったことを後悔しているのなら許しますと歌う。最後に4人は愛だけが大切なものだと歌い幕となる。

4. 三幕
 幕が上がると宮殿の中庭、塀の外からペドリロが水夫クラースを連れて船から戻って来る。逃げる準備に西洋の服に着替え、ベルモンテを呼び準備に宮殿に戻る。ベルモンテは愛によって不可能なことも全て成し遂げられると歌う。そこにペドリロがマンドリンを持って戻って来て、合図の小唄を歌うと、コンスタンツェが窓辺に現れる。ベルモンテはクラースが船から持って来た梯子を掛けてコンスタンツェを助け出し、塀の外に逃げ出す。一方ペドリロはブロンデの窓辺に梯子を掛けブロンデの部屋に入り込む。そこに一人の召使が怪しい音を聞きつけて確かめにやって来る。そしてオスミンを起こし、怪しい物音がした、あなたの部屋の二階に梯子がかかっている、と告げる。
そこに、梯子で逃げようとした、ブロンデとペドリロが現れオスミンに見つかってしまう。オスミンは衛兵を呼びに行き、一連の衛兵を連れて戻って来る。その隙を見てブロンデとオスミンは塀の外に逃げ出す。衛兵たちはそれを見て追いかけて行く。追いかけて行った衛兵はブロンデとペドリロ、コンスタンツェとベルモンドを捕らえて戻って来る。衛兵たちは四人を牢屋に連れて行く。オスミンはこの時を待っていたと歌う。そこに騒ぎに眠りを妨げられたセリムが現れ、何事が起っているのか、オスミンを呼んで来いと衛兵隊長に命じ、連れて来られたオスミンは、昼間雇った建築技師がコンスタンツェとブロンデ、ペドリロを連れて逃げたと説明する。セリムは怒るが、もう捕らえていると聞くと、ここへ連れてこいと命じる。ベルモンテは自分の生い立ちと身代金を持参したので釈放してくれとたのむ。実はベルモンテの父親はかつてセリムが統治していた植民地を襲い、その場所を勝ち取ったばかりか、セリムの家族をも殺してしまった。セリムはその植民地の支配を失ったばかりか、トルコの宮廷における地位も失い、今はこの荘園にある離宮を任されているに過ぎない。そんな男の息子を許す事が出来ようかと言って宮殿に戻っていく。残された二人は一緒に死んでいこうと歌う。そこにブロンデとペドリロが連れて来られ、私たちは拷問されて殺されるとベルモンテに訴える。そこにセリムがオスミン、高官、衛兵たちと現れ、皆を許すので故郷に帰る船に乗っていいと告げる。一同セリムの寛大な心を称え幕となる。

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