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ズボン役

R・シュトラウスのオペラにはズボン役がよく登場します。
ズボン役とは主にメゾソプラノやソプラノの歌手が男性キャラクターを演じる場合です。

役柄としては青年や男子の役が多いです。
ナクソスでもR・シュトラウスは作曲家をこのズボン役にしています。


※セーナ ユリナッチの作曲家

他にR・シュトラウスは薔薇の騎士の青年貴族オクタヴィアン、倒錯的ですが男子として育てられた娘、アラベラのズデンカなどをズボン役にしています。

ホーフマンスタールはナクソス島のアリアドネの制作過程で作曲家はテノールをと希望したようですがR・シュトラウスは頑として譲らなかったそうです。
確かに何かを一途に思い込む青年や少年にはこのズボン役は効果的です。
そしてどの作品でもズボン役のメゾソプラノとソプラノの夢のように美しい二重唱を書いています。

多分R・シュトラウスはこれがやりたかったのですね。

アラベラではアラベラとズデンカの二重唱、ばらの騎士ではオクタヴィアンとゾフィーの見初めの二重唱、そしてナクソスでは作曲家とツェルビネッタのぎこちないラブデュエットであります。

(ただ作曲家がソプラノの場合はどちらが歌っているのか見分けがつかない場合があります。
最近聴き直したラインスドルフ盤でのユリナッチとピータースの場合がそうでした。)


※ラインスドルフ盤 1960年 ウィーンで録音 ベリーが音楽教師とハレルキン二役歌っています。

男性が女性を演じる歌舞伎はあのように美しい女形を観ることが出来ますがズボン役にも中性的な美しさをそこに観ます。
このような倒錯的手法を好んだR・シュトラウスは我が国の歌舞伎を知っていたでしょうか?

いずれにいたしましてもR・シュトラウスはどうやれば聴衆に受けがいいのか、その劇場的手法をよく知っていました。
例えば劇中劇ではありますがシリアスな芝居の中に箸休めのようにコメディデラルテの滑稽な芝居を入れる手法は歌舞伎でもありますね。この手法は世界共通なのでしょう。


※1944年 ウィーンでのコメディデラルテの役者たち サイン入りです。

ただその巧みさが仇になり何回か聴くと飽きてしまうということがあります。
演じる歌手たちにもよりますが安手のミュージカルやオペレッタのように思えてきます。
ただし作曲技術は一流ですからそうは聴こえないのですが….

ミレッカーやレハールを毛嫌いしていたようですがある意味で近親憎悪のようなものでしょうか。

R・シュトラウス研究の先生たちは怒るかもしれませんが彼の音楽にはエンターティメントとしての通俗性が結構あります。
キャスト達が歌い演じる稽古を聴いていて感じたことでした。

要するにR・シュトラウスのオペラは凝っていますが聴く立場として何も難しいところはありません。

このナクソス島のアリアドネも軽いオペレッタ風にするのか、あるいは重厚なオペラにするのかどちらも演出や歌い方で可能です。

オペラバフのナクソスはどうなりますでしょうか?
ご自分の目と耳でお確かめいただきたくお願いいたします。

オペラバフ 制作

 

 

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