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序幕の人々 その二

オペラバフは2023年9月16日、17日に調布文化会館たづくり・くすのきホールにてR・シュトラウスのナクソス島のアリアドネを上演いたします。
どうぞよろしくお願いします。

さてそのナクソス島のアリアドネの序幕に登場するキャラクターを紹介する2回目であります。

その二は執事、音楽教師、バレエ教師であります。
この三人に共通しているのは中間管理職で大人であるということです。

それなりに苦労をして今の地位があります。
妥協も交渉も知っています。そして部下たちに命令して従わせる義務を負います。

執事が「主人がこう言っているのだから俺の言う通りやれよ」と言うと音楽教師はちょっと厄介ですがやってみましょうという感じ、バレエ教師は調子よく「OKですよ!うまくやって見せましょう」と請け合います。

それぞれ部下の顔を思い浮かべながら返事をしているわけで、音楽教師は優秀ではあるけれどあまり融通が利かない作曲家にどう言おうか悩んでいます。バレエ教師は調子がよくてアバウトな部下たちですのであまりプレッシャーを感じていません。

サラリーマンの経験がお有りの方は身につまされるのではないでしょうか?
まさに三人のやり取りは部課長会議だからです。

序幕の始まる前にこのような会話があったのでしょう。

執事は従僕に「あ~また今さっきご主人様から呼ばれての、また余興の計画の変更だそうな。まっ、あたしがやるわけじゃないからいいけど。それを連中に伝えなければならん。
やれやれ、面倒なことじゃて」と愚痴のひとつも言ったのでしょう。

音楽教師は作曲家に「おお、そうだ!今度伯爵様のお屋敷の夜会の余興にオペラを仰せつかった。そこでだ。君の作ったオペラセリア、アリアドネをやりたいと思うのだがどうだね?」
と言い作曲家は小躍りして喜んだのかもしれません。

バレエ教師はツェルビネッタ一座の役者たちを集めて「あー、みんな聞いてちょーよ。今度伯爵様のお家でさ、パーティーがあるんよ。そんでね、なんかパーとした陽気なお芝居をご用命さね。
まっ、筋書なしの恋のさや当てみたいなやつをやりゃええと思うんだがね。ギャラははずむで!どうだい?」と調子よく言いました。

この三人はともに自分の思い通りにいかない場面に慣れており、世間はそういうものと達観しております。そしてそれを切り抜けるのが自分の仕事と弁えております。

執事は台詞のみの役ですが、「いいからやれよ!と上から目線なのか、「まあ難儀なことですがお願いしますよ」なのかで台詞の言い方が違ってくるでしょう。

音楽教師は芸術家気取りの作曲家、プリマドンナ、テノール歌手をなだめまくり何とか舞台を成立させようとします。プリマドンナをおだてすかして舞台に乗せるところは百戦錬磨です。

バレエ教師は座長格のツェルビネッタに筋を最初から説明してのみ込ませ上手くやらせることに必死です。でもあまり心配はしていません。

三者三様。
金を稼ぐのも楽ではありません。
この序幕の三人の役割は説得です。

 


ケンペがシュターツカペレドレスデンを振った名盤です。音楽教師アダム、バレエ教師シュライヤーでオールドファンにはお馴染みの二人です。

 


ベームがバイエルン放送響を振ったスタジオ録音盤です。音楽教師にF・ディースカウを起用しています。ディースカウはマズア盤でも歌っています。

 


レヴァインがウィーンフィルを振った録音です。執事長にシェンクを起用しています。音楽教師はプライ、バレエ教師はツェドニクです。

 

 

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