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タミーノ罷り通る その2

弁者との問答でタミーノの心理的葛藤を見せるというのは演技としてはとても難しいことですが、タミーノ役のテノールといたしましては見せ場です。

今まで正しいと信じていたことがいとも簡単に覆される。
それは特に若い時はどなたにもある経験ではないでしょうか。

弁者との問答があり次の笛を吹きながらのアリアに移行する訳ですが、問答の結果のアリアと考えますと不安を持ちながら一歩踏み出そうとするタミーノの心理状態がよく理解できます。
モーツァルトの心憎い音楽上の演出であります。

タミーノは古くよりリリックテノールの名歌手たちの持ち役であります。
METでこの役でデビュー寸前に事故で急死したヴンダーリヒ、引退の花道をこの役で飾ったウィーンのデルモータ、万能選手のゲッダ、英国のバロウズ、ヘフリガー、シュライヤー、アライザ、コロ、などすぐに挙げることが出来ます。
古い年代のアンダース、ショックなども忘れてはいけないでしょう。
私は1964年のザルツブルクでのクメントがお気に入りです。


※ヴァルデマール・クメント

ここに挙げた歌手たちの歌唱はすべて映像か録音で鑑賞できます。
それぞれ素晴らしい声を聴かせてはくれるのですが惜しむらくはどれもステレオタイプのおとぎ話の王子にしか見えません。

2月10日に来ていただいたお客様の中には魔笛はおとぎ話だからシンデレラ城に夜の女王が出てくるような演出であとはモーツァルトの音楽があればいいんだとおっしゃった方がおられました。

それも一つの方法であることは否定しません。
でもオペラバフはそうしたくはなかったのです。主役から合唱団に至るまで個々のキャラクターに人として自然な感情を出して欲しかったのです。
23日の公演はそれが成功しているかどうかをご自身の目で確かめていただきたく思います。


※フリッツ・ヴンダーリヒ

 


※ルドルフ・ショック

 

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