ウクライナ侵攻以来ロシアの立場は最悪ですが、皆様はロシアというとどんなイメージをお持ちでしょうか?
私はツァーが支配していた19世紀のロシアにタイムスリップできるのなら是非行ってみたいと思っています。私にとってロシアはプーシキン、ツルゲーネフ、トルストイ、レールモントフ、そしてドストエフスキーの国です。
どこまでも広がる白樺林、サモワール、フランスかぶれの貴族たち、美しい近衛士官、信心深い農民達など、ツルゲーネフの猟人日記、トルストイの戦争と平和は若い時夢中で読みました。
「僕が誰よりも聡明で高貴な精神を持ち合わせていたら今この瞬間に跪きあなたの愛を乞います」ピエールがナターシャに告白する場面ですね。ここは何度読んだか分かりません。
さてオネーギンです。岩波文庫に入ってますからお読みになった方も多くいらっしゃるでしょう。
とにかく桁違いの大金持ちのお坊ちゃん。高度な教育を受けフランス語も自在に使えて礼法も心得ていますが何にも興味が持てない。しょうがないから長い旅に出てしまう。
そんな男が帝政ロシアにはかなりいたのではないのでしょうか。
隣家の少女に惚れられても冷たく拒絶してささいな行き違いから決闘で親友を殺し端から見て何が楽しいんだろうという人生を送ります。
しかしそんな男に神は大鉄槌を下します。長い旅から帰国すると嘗て自分が拒絶した少女が美しい公爵夫人となり目の前に現れますと舞い上がって逆に惚れちゃうんですね。
馬鹿な話です。
やっと彼が人生の意味を彼女に見出したとしても相手は生身の人間です。そうはうまくいきまん。19世紀のロシアですから公爵夫人はオールマイティで複数の若いツバメがいてもおかしくはないでしょう。でも彼女のプライドが許さなかったのでしょう。
はっきり拒絶します。
チャイコフスキーはこのオネーギンで素晴らしいオペラを書きました。私は大好きです。
もう最初のメランコリックな前奏で痺れちゃいます。
タチアーナの手紙の歌はいいソプラノが歌うと私は年甲斐もなく泣きます。
人を恋して一晩まんじりともしなかった方ならお分かりになるはずです。
またこのオペラに関してはどうしても現代の衣裳でやる演出は許せません。
宴会の場にあのロシア陸軍伝統の深緑の軍服が出てこないと満足しません。
映像であればグラインドボーンのものがお薦めです。
オーソドックスな演出で安心して観ていられます。
CDですとお国ものですからロシアの歌手たちのものが数種出ていますが今一つ好きになれません。
カイルベルトが振った1962年のミュンヘンライブはヴンダーリヒのレンスキーが絶品ですが惜しいことにドイツ語です。
レヴァインがドレスデンで録音したものが現時点では一番のお薦めです。
チャイコフスキー
エフゲニー・オネーギン
オネーギン/アレン タチアナ/フレーニ オルガ/フォン オッター
レンスキー/シコフ グレミン/ブルチュラーゼ
レヴァイン指揮 ドレスデンシュターツカペレ ライピツィヒ放送合唱団
中古CD スタジオ録音 1760円
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