衣裳

トゥーランドット この衣裳はなんて難しい

「トゥーランドット」と聞くとオペラ好きの大部分の人がメトロポリタン歌劇場のゼッフィレリ演出の美術を思い起こすでしょう。

彼の「ラ・ボエーム」と並んでメットの代表的な演目です。DVDにもなっていますし、実際に歌劇場でご覧になった方も多いでしょう。あの印象が強烈で、他の演出のものはなかなか思い出せません。

では原典に帰って、中国の衣裳の歴史を見てみようとすると、これがなかなか大変です。民族衣装を集めた図集が何種類か欧米の出版社から出ていますが、そこに乗っている衣服はほとんどが清朝のものなのです。

では、絵画からはどうかというと南画の典型的な登場人物の来ている衣服しかありません。中国製の陶磁器にも、日本製の唐風の陶磁器にも型にはまった衣服を着た人物しか書かれていません。中国は易姓革命の国なので王朝が変わると、文化ががらりと変わってしまって、前の王朝のものは完全に排除されるのです。庶民の衣服はそうは変わっていないと思われるのですが、そういう人たちの衣服は絵画に描かれることも無いし、どこかに残ったりもしないのです。

あとはかなり昔の唐三彩の人物、兵馬俑の埋められていた像というようなものになります。京劇の俳優の衣裳に名残が見られるのかもしれませんが、歌舞伎の衣裳と同様に劇場で上演されるためのもので、多分大部デフォルメされているのだと思われます。

という事で、実際に衣裳を作らなければならないとしたら、ほとんど想像の古代中国の衣服を作らなければならなくなるのです。観客のイメージに逆らうには、本当のデザインの力が必要です。それはなかなか難しいので、客席から見た色彩のイメージ、全体の見え方、演出家のイメージ、照明映え、キャストの動き易さ、経費、時間で、最終的な衣裳が出来上がります。

 

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