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タミーノ 罷り通る

※タミーノ 濱田翔

シカネーダーはタミーノを日本の王子という設定にいたしました。
ただシカネーダーの時代のヨーロッパで日本という国がどれくらい知られていたかは疑問ですね。
ちょうど江戸時代の寛政、家斉の治世の時期でしょうか。中国のさらに東の遠い国という認識があればいいほうだったでしょう。

現代では中国と日本を混同する人は稀でしょうが蝶々夫人の公演での変な衣裳や仕草をみるとさすがに風俗は見分けがつかないようです。

つまり、タミーノは遠くの知らない国から迷い込んだ貴公子くらいの認識だったのでしょう。そうだといたしますとタミーノが何者であるかは解釈が何でもありということになります。現にタミーノの衣裳は様々です。

ステレオタイプの西洋の王子の衣裳,ヘンテコな狩衣まがいの衣裳、カラフのような中国風の衣裳、中近東の王族のような衣裳など演出家の想像の範囲でいろんなものが出てきます。

意外なことに日本の正統的な時代衣裳は観たことがありません。
仮に本物の狩衣などは動きにくいでしょうし衣装代が高くつくでしょう。
また西洋人の考える侍だと甲冑をつけた武者が出てくるかもしれません。甲冑も鎌倉、室町期、戦国、安土桃山期とかなりイメージが異なりますが西洋人には理解の外でしょう。
それと甲冑をつけて動き回るのはかなり制約があり現実味は薄いでしょう。

それではシカネーダー設定にこだわるのであればどうするか考えました。

幕末、日本が近代化する夜明け前、特に軍服は西洋の軍装が普及し始めた頃でタミーノを戊辰戦争時の幕府軍に属する旗本の子弟としますと衣裳も西洋風の軍服で動きに無理がありません。
これは好都合というわけでタミーノを田宮太郎信成という幕軍の精鋭、伝習隊の兵士としました。幕府はフランスの軍事顧問がついておりまして軍装もフランス式でした。
ちょうど普仏戦争時のフランス軍の軍服を思い浮かべていただければよいと思います。

ただそれが皆にいきわたっていたかというと甚だ怪しく上級の人たちしか着ていなかったかもしれません。

江戸の旗本は俗に八万騎とも言われましたが太平の世になれてほとんど戦の役には立ちませんでした。
伝習隊に属する青年はかなりの変わり者だったのでしょう。

朱子学で教育された融通が利かないお堅い侍の子が全く異なる世界を見て多様な価値観があるのを学び少しずつ成長します。
直情径行型の純情な青年、多分江戸で岡場所にも行ったことがないのでしょう。
武芸オタクで実戦では今まで学んだ武芸が何の役にも立たず逃げ惑うことになりました


※タミーノ 竹内篤志

相手は示現流の薩摩武士です。武器も最新式の銃を持っています。泣きながら逃げたのではないでしょうか。

タミーノのキャラクターに必要なのは何よりも気品であります。世慣れていないお坊ちゃんが一人のしっかりした青年に変化していく過程が魔笛の一つのテーマであります。
そのハイライトが弁者との問答であります。

ここでタミーノの心理の変化をしっかり見せることが重要です。
地味な場面ではありますが弁者にはいい歌手が出ますよね。
この場面を外すハイライト公演が多いのですがこれはいただけません。本質が見えなくなるからです。

おとぎ話ではなく生身の人間が躍動する魔笛をやりたいと思いました。
ですからタミーノは我々のイメージしやすい旗本の侍の子なのです。

 

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